「ボストンの人々」(ヘンリー・ジェイムズ)


日本人向け図書室にて借出し。先日読んだ「The Master」に触発されまして。
●「The Master」感想:http://d.hatena.ne.jp/shippopo/20061116


H・ジェイムズにこんな作品がある事自体知りませんでした…というのは多分私だけじゃないようで、7年前に図書室に寄贈された本なのにこれまで一人も借りた形跡が無し。わーい一番乗り(?)。



数あるH・ジェイムズ作品の中ではかなりの異色作。南北戦争が終わり、奴隷解放運動も一段落して、さあ次は私たちの番!とばかりに活気付いたフェミニスト達の活動とそれを取り巻く社会状況を、相当辛辣に描いている。


小説として読む分には大変に面白いのだが、これは当事者は怒るよねえ、と思ったらやっぱり発表当時はボストン住民から非難ごうごうだったそうだ。今こんなの出したらフェミニストから総スカンを食らうこと必至。もちろん彼が批判しているのはフェミニストだけではなく、その手の運動の核であった理想主義を世俗へ引き降ろそうとする社会全体のモラルの低下にあるわけですが。
当時のアメリカの状況が把握できていないと誤解だらけで読まれそう。


ちなみにこの作品は「アメリカ文学初のレズビアン小説」ということになっているらしい。へええ。いや内容は全然そういう話じゃないですよ。



ボストニアン [DVD]

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調べてみたらジェイムズ・アイボリー監督で映画化もされてました。J・アイボリーがヘンリー・ジェイムズに共感するというのは何だかとっても分かりやすい。
あまり好きな監督じゃないけどキャストが豪華なので一度観てみても良いかな。



天使が堕ちるとき

天使が堕ちるとき

こちらは同時期の英国での女性解放運動を背景に書かれた小説。ちとメロドロマっぽくていかにも女性向け、かなあ。男女ともに納得できるフェミニスト小説というのは難しいですね。