「Die Wolke(みえない雲)」(2005)


レンタルDVDにて観賞。
今年のドイツ映画祭でプレミア上映されたときの邦題は「黒い雲」でしたが、配給会社のサイトを見る限り、今冬の一般公開時には「みえない雲」となっている模様。
●日本公式サイト:http://www.cqn.co.jp/movies/index.html#mienaikumo


原作はこちら(私は未読):


見えない雲 (タッチブックス)

見えない雲 (タッチブックス)

(11月に小学館より文庫化の予定あり。ありがたや。)


チェルノブイリ事故の一年後に書かれた作品で、当時は非常に話題になったそうです。
ドイツにしてみればチェルノブイリなんてほんの目と鼻の先ですから、舞台を自国に移してのシミュレーションはかなり身に迫るものだったのでしょう。


事故から20年、原発の恐ろしさは理解しつつも止めるに止められない…とやむなく稼動を続けている現状、この映画が製作・公開される意義は充分にあると思います。


話そのものは非常にストレート。「事故の前」と「事故の後」の変化を一人の少女の目を通じて描いていきます。
この主演の女の子がとても良い!とても健康的で伸びやかな表情を見せる、本当に今どきの女の子という感じで、前半での友達とのじゃれあい振りなんて普通の青春映画のよう。


それだけに事故の悲劇が一層胸に迫るのですが…それでも決して投げやりにならない健気さが嘘っぽくならず、むしろ身近にその存在が感じられて、そこが映画の説得力にも貢献していると思います。


映画の要になっている恋愛要素は原作には無いらしいですが、これも非常に丁寧に描かれていて映画として観せる分には充分ありかな、と思わせてくれました。下手に教訓じみた話になるよりずっと良い。


別に映画的な驚きとか超どんでん返し!があるわけではありませんが、こういう映画にその種の技巧を求めること自体が間違ってますよね。素直に素直に観たい作品です。



風が吹くとき

風が吹くとき

このアニメも公開時には話題になりましたね。さすがにこの老夫婦よりは、今回の映画の中の人々の方が「核」に対する知識はあったようです(まあ知識があったからといってどうなるわけでもないとも言えますが…)。



黒い雨 (新潮文庫)

黒い雨 (新潮文庫)

仮題の「黒い雲」はやっぱり↑からの連想なんでしょうか。