「冬の旅人」(皆川博子)


日本人向け図書室にて借出し:


冬の旅人

冬の旅人


(文庫版(上):ISBN:4062750589、(下):ISBN:4062750597


一枚の絵に魅せられたことから、帝政末期のロシアに渡った女性・環(タマーラ)の数奇な運命を描いた壮大な物語。


この環=タマーラがかなりムラのある性格で行動に一貫性がないので、話が最後まで収斂してこない(実際、最後の方はほとんどラスプーチンとロマノフ王家に主役を奪われている)のが難点だが、まあ現実には終始一貫した志の持主なんてそうそういるわけがなし、これだけドラマチックな展開の中では絶えず心が揺れ動いていて当り前だよなあ。


全ての原動力であるべき絵への情熱についてはもっと書き込んでほしかった気もするけど、これだけのボリュームを飽かせることなく読ませる技量はやっぱり凄い。幸い図書室にはまだまだ所蔵本があるので、引き続き皆川作品を読んでいくつもり。


タマーラが魅せられた画についても調べてみました:
「岩に座せるディアーヴィル(The Seated Demon)」by Mikhail Vrubel
画像:http://www.abcgallery.com/V/vrubel/vrubel2.html


うーんなるほど、確かにインパクトの強い画風だわ…。