「隠し部屋を査察して」(エリック・マコーマック)


隠し部屋を査察して (創元推理文庫)

隠し部屋を査察して (創元推理文庫)

vault
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/v_イlt/ (類音volt,bolt)【名】

1 〔建〕アーチ形屋根[天井],丸天井;(アーチ形屋根[天井]の)一連のアーチ.

2  (特に地下の)アーチ構造の場所[部屋,通廊].

3 a (しばしばアーチ構造の)地下貯蔵室

b (教会・墓地の)地下納体堂《しばしばアーチ構造の遺体を納める部屋》

4 (特に銀行の)(地下)金庫室,貴重品 保管室.

5 《詩》[the 〜] 丸天井のようなもの;(特に)大空,穹窿(きゅうりゅう)

6 ?〔解剖〕蓋(がい)《口蓋・頭蓋など》

ジーニアス英和辞典より;一部編集)


表題を聞いて「隠し部屋」って一体どんな単語の訳語だろう?と思っていたのだけど、「vault(s)」だったんだ。本編を読んだ後で改めて辞書で調べると、色々と連想が働く。一つの閉じた小宇宙(小部屋/脳内)でありながら貴重品を、更には死体を納める場所でもある、といったような。


表題作に限らず全20編の短編集は「怪奇」と「幻想」の間をさまよっているような作品揃い。(最初「法螺」と「ホラー」の間で…と書こうと思ったけどあまりにしょーもないので止めました)
描かれている状況を冷静に考えると結構寒いものがあるはずなのだけど、書いている本人が読者を怖がらせようとは全く思ってないので、何だかすーっと通り過ぎてしまう。通り過ぎた後で何かが引っかかって振り返る…そんな印象を受けた。


こうやって20編も集めて読むとそれでもゾワゾワっとくるものがあるけれど、雑誌の中に一編だけこういうのが紛れ込んでいたら、むしろ食事中に砂粒を噛んだような違和感を覚えるのかもしれない。あの感触はちょっとイヤなもんですよね。