「総統の子ら」(皆川博子)


日本人向け図書室より借出し:


総統の子ら

総統の子ら


昨年「NAPOLA」という映画を観て、初めてナチスにそんなエリート教育機関があったのを知り(初めてばっかりだなあ…無知すぎ)ちまちまネットで調べていたところ、ずばりナポラを舞台とした小説があると知って読んでみた。


●映画「NAPOLA」感想:http://blogs.yahoo.co.jp/shippopo67/8609729.html
●DVD情報(Amazon.de):http://www.amazon.de/gp/product/B0009S6QSS/


実際にはナポラが舞台になっているのは前半のみで、それ以降は卒業後に実戦に駆り出された若者たちの悲壮な運命が描かれている。


ナポラ時代はまだ少年たちの甘やかな交流が時に耽美に展開されていたりするのだが、後半になるとそういう甘さは一切影を潜め、ひたすら厳しい戦いが繰り広げられる。重苦しい内容だが、登場人物がしっかり書きこまれているし、適切な地図の助けもあって「戦争ものオンチ」の私でも充分ついていけた。


著者はあえてドイツ軍関係者の当時の視点のみに絞って話を進めているので、全く予備知識なしでこれを読んだら思いっきりドイツびいきになってしまうだろう。もちろん著者の意図はドイツの正当化ではなく歴史の相対化にあるわけだが、同じ敗戦国の日本はどう対応すべきなのか?という問いかけも当然含んでいるだろう。周辺国との関係も綿密に書き込まれており、色々考えさせられる部分が多かった。史実と突き合わせたりしたうえで、改めてこの大戦の事を考えてみたい。