「A Long Way Down」(ニック・ホーンビィ)

A Long Way Down

A Long Way Down


スキャンダルで仕事も家庭も失ったマーティン。植物人間の息子の世話で人生をすり減らしてきたモーリーン。逃げる恋人を追い回すジェス。バンドも恋人も離れていったJJ。
晦日の晩に自殺しようと思い立った事だけが共通点の、環境も年齢も異なる四人の男女がビルの屋上で鉢合わせたことから事態は思わぬ方向へ…。


他人からすると他愛もない悩みのように見えても実際に当事者になってみるとコトの大きさに愕然として身動きが取れなくなる、そんな現代人の憂鬱を書かせるとやっぱりホーンビィは上手い。
前作「いい人になる方法 (新潮文庫)」は語り手がエリート女性だったせいか今一つ乗れなかったが、今作は深刻さとユーモアが絶妙のバランスで織り込まれていて飽きさせない。


他の三人が割とダウナーというか活気がない(そりゃ自殺しようってほどだから元気がなくて当然だ)のに対して一人ブッ飛んでるのが一番年下のジェスで、このぶっ飛び具合が受け入れられるかどうかがこの小説を好きになれるかどうかを決めるような気もする。しかし読み進めていくとなんだか愛着の湧いてくるキャラで、最後の方では私は結構気に入ってしまった。まあ「天使」の話なんかはちょっと悪ふざけが過ぎると思うけど。


ちょうどDVDで「ラブ・アクチュアリー [DVD]」を観ていたせいか、映画にしたらどうなるかな、と色々想像してみるのも楽しかった。やっぱりマーティン役はヒュー・グラントになるのかしらん?