先月読んだ本から(2)

先月は海外ものも充実:


ポーランドのボクサー (エクス・リブリス)

ポーランドのボクサー (エクス・リブリス)

ポーランドのボクサー」:東欧の作家と思っていたら南米でした…しかもユダヤ系移民ということで、自分のアイデンティティをどこに求めるかという主題を抱えながらも、発表済の3つの中編をあえてバラバラにして再編成するという大胆な試みに、ユダヤ/移民文学に留まろうとしない作者のなみなみならぬ文学的野心を感じました。本質はエンリーケ・ビラ=マタス的な文学オタクだと思います。
バートルビーと仲間たち

バートルビーと仲間たち



ある子供

ある子供

「ある子供」:三つ子の魂百まで、ってつい思ってしまう、毒舌ベルンハルトの幼年時代。もちろん本人の弁なので書いてあること全部そのまま鵜呑みになんてしないけど、少なくとも著者本人の中ではこういう経験だったのでしょう。どんどん続きが読みたい!
消去 【新装版】

消去 【新装版】

「消去」の新装版も出たしね!大傑作ですよこれは。



煉瓦を運ぶ (新潮クレスト・ブックス)

煉瓦を運ぶ (新潮クレスト・ブックス)

「煉瓦を運ぶ」:アリステア・マクラウドの息子もまた小説家に、とはいえ資質はかなり異なる気がします。アレクサンダーの作品は体験、それも自分の「身体」が体験したこと、そこから自分の人生の意味がまるっきり変換してしまう一種のエピファニーのような体験を描いて胸にズシンとこたえます。上手い、上手すぎる…。



プランD

プランD

「プランD」:ベルリンの壁が崩壊せず東独がいまだ存在するパラレルワールドで起こった事件を巡るミステリ。社会主義革命があのように無残に失敗せず、改革によって今も健在だとしたら?という設定が面白い。実在の政治家も改変された姿で登場してきてニヤリ。
読了後にドイツ本国での書評をチェックしていたら、同時期に発表されたEugen Ruge「In Zeiten des abnehmenden Lichts」と比較しているものがあって、ああそういえばこっちも早く翻訳されないかしら?と改めて期待しちゃいました。まあミステリってジャンルがはっきりしている方が売り込みやすいんでしょうが…。