先月読んだ本から

師走は忙しいので簡潔に:


出島の千の秋 上

出島の千の秋 上

出島の千の秋 下

出島の千の秋 下

「出島の千の秋」:出る出ると言われて待っててようやく出た!上下巻で相変わらずボリューム多いのかと焦りましたが「クラウド・アトラス」に比べたら恐れるほどではないし、むしろすぐ読み終わっちゃって寂しーい、とまで思ってしまいました。
長崎は出島を中心に繰り広げられる西洋人と日本人の様々な陰謀と駆け引き。微妙に史実からずらされてはいますが資料を丁寧に読み込んで構成されたと思える内容で、しかも外国人の視点が中心になっているので日本の時代小説にありがちなヘンな精神論とか日本人論に踏み込まず、物語そのものの面白さを堪能できるつくりになっています。海外小説なんて読まないよ、という人こそ読んでみてほしいなあ。



読んで、訳して、語り合う。都甲幸治対談集? (立東舎)

読んで、訳して、語り合う。都甲幸治対談集? (立東舎)

「読んで、訳して、語り合う。」:

堀江:世界文学を読むというのは、人を信用することですよ。自分が読めない言語を訳してくれた翻訳者を信用して、出会いをくれた恩人として記憶に残すべきなんです。翻訳というのは、翻訳者がそのときに使いこなせる日本語を用いて、今の自分にはこれが精一杯だという言語体験を指しだしたものなんですよね。(P.52)

うう、堀江敏幸氏の性格の良さが滲み出る発言(感涙)。それに比べて、

都甲:(略)日本で海外文学というとセンスいいとかおしゃれ、かっこいい、頭いいみたいな雰囲気で売ろうとしているけれど、完全に間違いだと思います。文学って、わけのわからないおっさんが家に上がりこんできた、みたいなことですよね。(P.32)

おっさん呼ばわり(笑)。でもこれもまた、ものすごく頷ける発言だったりして。



ムシェ 小さな英雄の物語 (エクス・リブリス)

ムシェ 小さな英雄の物語 (エクス・リブリス)

「ムシェ 小さな英雄の物語」:前作「ビルバオ−ニューヨーク−ビルバオ」が好きすぎたので、それとはかなり毛色の違う今作は、良作ながらもなかなか上手く読み込めずにいたのですが、先日イベントで本人のお話を直接伺えて少し手掛りをもらえた感じ。イベント内で読まれた詩がまた素晴らしかったので、ぜひ詩集の方も翻訳を出していただきたいです。



早稲田文学2015年冬号」:実はまだしっかり中身を読んでいないのですが、こういう特集は青田買い好きの私には大変ありがたいです。バスク語翻訳の金子奈美氏は上記イベントでも通訳者として御活躍されていました。昨今は地道に翻訳してるだけじゃ業界そのものが立ち行かないんだろうなあ、大変だなあ、と思ってしまったり。



「国境を超える現代ヨーロッパ映画250」:非常に興味深い内容ではあったのですが、タイトルに「250」と具体的な数字を挙げているならもうちょっとリストをしっかり作ってほしかったな、とは我儘な要求でしょうか。しかも紹介されている映画のほとんどが、特別な映画祭に自覚的に足を運ばないと、あとはもう観る機会がほとんどないという現実…。私個人で言えば、ドイツやアイルランド関連の映画は積極的に情報を集めているからまだ話が見えるけど、それ以外の作品に関してはほぼお手上げという感じ。ネット配信とかでこの手のマイナーな映画ももっとアクセスしやすくなると良いんですが…。