「フォントのふしぎ」(小林章)


図書館にて借出し:


フォントのふしぎ ブランドのロゴはなぜ高そうに見えるのか?

フォントのふしぎ ブランドのロゴはなぜ高そうに見えるのか?


●ブログ『デザインの現場小林章の「タイプディレクターの眼」』:http://blog.excite.co.jp/t-director/


真性活字中毒なので、もちろんフォントの話も大好物です。
著者はドイツ在住のタイプ・ディレクターで、ライノタイプ社で欧文書体をせっせとデザインしている方です。
考えてみれば当たり前なんですがフォントにもちゃんと作者がいて、技術の進歩や時代の移り変わりに伴って
様々なデザインを開発しているわけなんですよね。改めて感心・感謝。


本の中身は上記ブログを読んでもらえれば大体の雰囲気はつかめると思いますが、マニアックな内容も
楽しいビジュアルで分かりやすく伝えてくれるので、終始わくわくしながら読み進められました。
例えば副題の「ブランドのロゴはなぜ高そうに見えるのか?」という問いについても、古代ローマ遺跡の
碑文や18世紀の銅板印刷から遡ってその理由を説いてくれるなど、欧州の町並みや商品で実際に使用されて
いる書体を、写真を使って具体例を豊富に挙げてくれます。写真を眺めているだけでも充分に楽しいのに、
読了後は思わぬ豆知識もついていると言う仕掛け。これはオイシイ。


個人的には「なごみ系ウムラウト」の可愛らしさにヤラれました。あとドイツ人が書く「長いくちばしの1」、
そうそう、ドイツに居た頃はこの手の数字になかなか馴染めなくて難儀したんだよなーなどと懐かしくなりました。
そんな日常感覚に溢れていて、なおかつプロの目線から捉えられた欧州デザイン・カタログです。



市川崑のタイポグラフィ 「犬神家の一族」の明朝体研究

市川崑のタイポグラフィ 「犬神家の一族」の明朝体研究

毛色は随分違いますが、書体を巡るスリリングな謎解きとして↑なぞも面白かった。


日本語は漢字も含めて文字数が多いから余計大変…そんな苦労がしみじみ偲ばれる内容です。
文庫版もありますが、図版の豊富さでハードカバー版がやっぱり◎。