「ミステリウム」(エリック・マコーマック)


図書館にて借出し:


ミステリウム

ミステリウム

それほどパターン化した世界、それほどわざとらしい世界---謎のない世界---に生きることを思って、私はぞっとした。(P.304)


ジャンル分けに拘っているわけではないけれど、今読んでいるのがSFかミステリか、はたまた幻想小説か、
分かっていて読むのと分からないまま読むのとでは心構えも違うし、読後感も変わってきます。
この著者に関しては以前に「隠し部屋を査察して」を読んでいたので、ミステリ仕立てだけどきっと本当は
おどろおどろしい幻想小説なんだぜ…とビクビクワクワク読んでいたら、実はミステリとしても一応(一応ね)
成立していて、かえって驚きました(失礼)。ちょっと得したかも?


とはいえ、濃霧のように作品全体に漂う不穏な雰囲気は正に著者ならでは。さほどグロテスクではないのも
真性ファンには物足りないかもしれませんが私には有難かったです。謎のない世界はやはり物足りない、と
自ら謎をこしらえてしまう人間の心こそが正に謎、そんなやるせなさがまた魅力的なのでした。