「ベルリン音楽異聞」(明石政紀)


図書館にて借出し:


ベルリン音楽異聞

ベルリン音楽異聞


みすず書房だしストイックな装丁だし、きっとお堅い音楽評論集なのであろう…と思いつつ
著者略歴を調べてみたら、以前はパンク・オルタナティブ・ミュージックの批評をしていたと
あって俄然興味が湧き、読んでみることにしました:


ドイツのロック音楽―またはカン、ファウスト、クラフトワーク

ドイツのロック音楽―またはカン、ファウスト、クラフトワーク


ポップ・ミュージックとしてのベートーヴェン

ポップ・ミュージックとしてのベートーヴェン


↑こんなイカした?本も出してました。
(そういえばドイツに行ってまず驚いたのはクラフトワークとNENAがバリバリ現役だったことだなあ…)


最初の章「ドイツ国家の怪」は以前映画「プリンセス・シシー」三部作を観たときに私も気になって調べた事があったので、
ああ著者もこういうの気になる人なんだ、と妙に親近感。そこから引き込まれるように読んでいきました。


主なテーマは20世紀のベルリンにおけるクラシックを中心とした音楽上演裏話、という感じ。時代柄、当然ながら
ナチの文化政策に関わってくる話も多いです。
しかしやはりパンク評論などから入ってきただけあって話はクラシックだけに止まらず、映画や劇場、大衆音楽まで
含めた当時のベルリンの雰囲気を、少しひねくれた視線で拾い上げていきます。
正式な音楽史では零れ落ちてしまうささやかな、けれども大切な物語、例えばユダヤ人排斥が始まったばかりの時期に
ユダヤ人隔離政策の一環として一瞬だけ存在したユダヤ文化同盟劇場の話などは、こういう視点があってこそ
拾い上げられたのだろうな、との思いを強くしました。


可愛いネコのお導きによって気軽に読み進められる構成なので、ちょっとかっこよく構えてる装丁にビビらずに
まずは手に取ってページをめくってもらいたい、そんな本でした。



ナチ娯楽映画の世界

ナチ娯楽映画の世界

テーマ的に↑多少この本と重なる部分も。