「The Help」(Kathryn Stockett)


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The Help

The Help


舞台は1960年代初めのミシシッピー。公民権運動は大都市を中心に次第に高まりつつあったが、ここ南部では隔離・分離という名を借りて
黒人に対する根強い差別意識がずっと残っている。大学を卒業して実家に戻ったジャーナリスト志望の白人女性・スキーターは、不在中に
自分の面倒を幼い頃から見てくれた黒人の乳母が不当な扱いで解雇されていたことに激しいショックを受ける。それをきっかけに彼女は
白人家庭に仕えている黒人女性達の本心を聞き出そうと思い立つのだが…。


このスキーターと黒人女性2人の語りが入れ替わりながら話は進んでいきます。スキーターは著者自身の投影のようで、白人社会の中では
不器量でちょっとはみだし者、でも客観的に見れば充分に恵まれた環境のお嬢様。黒人女性の真の声を写し取るのはまだまだ役不足と言うこと
なのか、普通なら聞き取った内容をそのまま章立てして小説内に組み込む構成になるところを、敢えてそうしてはいません。
それは著者の良心の表れなのかもしれませんが、結果的にはスキーターだけ「勝ち抜け」ちゃった印象もあって、もっと踏み込めたのでは、と
いう疑問も残ります。(彼女があそこで鞄を忘れるのはいくらなんでも無いだろう、とも思う)


とは言え一つのコミュニティに属する様々な立場の人達が良く描かれており、読書会などで取り上げたら活発な意見交換ができそうな内容だと
思いました。当時の南部の状況や差別意識も窺い知ることができます。わずか50年前なのに、と思うと結構暗澹たる思いになってしまう…。


映画化も予定されているようで、どういう構成・キャスティングになるか楽しみです。




時代や設定から思い出したのが↑。黒人女性と白人の少女という組合せがしっくり馴染むのは、それが一番パワーバランスが安定した状態だから
かも知れない、と考えるとちょっと悲しい…。


余談ですが、小説の中でお正月にblack-eyed peasを煎って食べるという習慣が描かれていたので、調べてみたら南部の風習だという説明が:
●「とみぃのパープル・ニューヨーク」:http://plaza.rakuten.co.jp/calebny/diary/200501050000
ヘンな名前のバンド名だと思ってたら実在する豆なんだ…(恥)。