「絆と権力 ガルシア=マルケスとカストロ」(A・エステバン、S・パニチェリ)


図書館にて借出し:


絆と権力―ガルシア=マルケスとカストロ

絆と権力―ガルシア=マルケスとカストロ


ガボカストロの間にかなり親密な友情が存在する…ということは何となく知っていましたが、本書はその成立ちや
歴史的背景を数多くの資料を基に綿密に考察しており読み応えがあります。


ガボに限らずラテンアメリカの作家の多くは米国の帝国主義と自国の独裁者あるいは軍事政権のどちらにより与するか
という意思表明を絶えず迫られており、その中で60−70年代に強く夢見られてきた理想的な平等社会=社会主義への
期待の名残りがキューバという国、そしてカストロという独裁者を特別な立ち位置に置いていることが良く分かりました。


そんな中で育まれる革命家とノーベル賞作家との友情は決して純粋ではないですが、といって安易な共犯関係でも
ない、なんとも複雑な様相を呈しています。元ジャーナリストで客観的分析に優れながら、溢れんほどの想像力に
満ちた作品を紡ぐ20世紀後半最大の作家、しかも権力というより権力者に近づき操ることに喜びを感じるガボ
著者の立場はガボに結構批判的ですが、それでも彼を不当に貶めてはいないし、むしろ描き出される人間像に
その是非はともかくますます興味が湧いてくるような内容です。


これを読んだら、これから続々出版予定のガボの自叙伝まで読みたくなって新潮社さんウハウハ状態、を狙って
いるんでしょーかね?なんかうまーくノセられている気もしますけど、とりあえず海外文学好きなら読むべしの
一冊でしょう。


生きて、語り伝える

生きて、語り伝える

↑自叙伝第一巻。