「はじめての宗教論 右巻」(佐藤優)


年末年始の読書本として購入、のはずがバタバタしていて今頃ようやく読了:


はじめての宗教論 右巻 見えない世界の逆襲 (生活人新書)

はじめての宗教論 右巻 見えない世界の逆襲 (生活人新書)


昨年は佐藤優氏の著作をよく読んだし、多分今年も読み続けていくことになるでしょう。
同志社神学部出身という高度な抽象的思考を必要とする精神的基盤を持ちつつ、外務省では極めて実際的・功利主義的な
業務に携わっていたという、その両極端さを上手く操縦できるバランスの良さがこの人の魅力なのだと思っています。
最近は自分のルーツを見せてくれるような、神学・宗教に関する著作も出してくるようになりました。この本も宗教の本源的な
部分を語りつつ、現代社会と宗教の関係についても様々な角度で分析しています。


氏自身はプロテスタントですが、『自壊する帝国』の中で彼の宗教観を垣間見せるような、印象に残った言葉がありました。
かつて神父でありながらイスラム教に改宗することを考えている友人との会話の中で、人間の本質には善も悪もない、
あるがまま受け入れよというイスラム教に惹かれる友人に対し、佐藤氏は自分は逆にキリストの許しだけで原罪が無くなると
思えない、もっと深い罪があると戒めるユダヤ教に魅力を感じると語ります;

マサル、それはよくわかるよ。キリスト教は中途半端なんだ。神を本気で信じるならば、イスラームユダヤ教のどちらかを
選ばざるを得なくなると僕は思う」
「スラーバ、僕の考えは違う。キリスト教の中途半端さが重要なんだと思う。僕はキリスト教がいいかげんな宗教だから
信じているんだ。いいかげんな僕にはちょうど身の丈に合っている」(『自壊する帝国』文庫版P.326-327)


「いいかげん」の抱える意味の深さ…常に真摯な佐藤氏だからこその発言と思えました。
これから出る予定の左巻も楽しみです。



神学部とは何か (シリーズ神学への船出)

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これもチェック中。