「群島−世界論」(今福龍太)

図書館にて借出し:


群島‐世界論

群島‐世界論


そのブ厚っっな装丁(背幅4.5cm!)に一見たじろいだものの、○○論という表題に予想される堅苦しさは無く、
心地良く読み進められるエッセイ集でした。大陸と海洋の狭間に存在するシナプスのように、刺激を受けて火花のような
煌きを見せる群島文化の数々が紹介されます。


特に本書では文学にまつわる話が中心で、文化人類学者でありながらその知識の多彩さに驚かされますが、思えば
クレオール主義」を宣言した時点から既に流動し混在する言語に意識的であった著者ですから、このくらいの文学論は
当然なのかもしれません。地理的・歴史的な広がりと生粋の文学者には無い新しい視点に、池澤夏樹の数々の書評を連想しました。
現在池澤氏が責任編集をしている世界文学全集が刊行中ですが、本書に出てくる数々の魅力的な作品を基に新たな文学全集を組んだら
それはそれで素晴らしいものが出来そう…と勝手に妄想を膨らませるとなんだかうっとりしてしまいます。



世界文学のフロンティア〈1〉旅のはざま

世界文学のフロンティア〈1〉旅のはざま

でも考えてみれば、このシリーズが著者編集の文学全集とも言えますね。要再確認。



けるきち(ケルト○○がい)の私にとっては、やはり中盤のアイルランド文学を論じたあたりが非常に刺激的で面白かったです。
特にケルト神話の幻の島「ハイ・ブラジル」に触れた第11章は、2001年に亡くなられたアイルランドのシンガーソングライター、
ノエル・ブラジルの事を思い出して、ちょっと感傷にふけってしまいました。当時から変わった苗字だな、と思っていたのですが
ちょっと謎が解けた気分。



アイルランドの歌手、メアリー・ブラックの「Columbus」。この歌を書いたのがブラジル氏。



クレオール主義 (ちくま学芸文庫)

クレオール主義 (ちくま学芸文庫)

大好き!な一冊。