「ブロデックの報告書」(フィリップ・クローデル)


図書館にて借出し:


ブロデックの報告書

ブロデックの報告書


2007年の高校生ゴンクール賞受賞作。
同年のフランス版本屋大賞作品が個人的には全く合わなくて、もおフランスの現代小説なんて読むの止めようかな!とまで思ってましたが
これを読んだらそんなことは言っていられなくなりました。第二次大戦が残した傷跡を描いた作品は数多くありますが、その中でも
構成と語り口が秀逸で、先に救いがないのは分かっているのに引き込まれて一気に読んでしまいました。


戦争が加害者・被害者の区別なく、個人にも共同体にも深い爪痕を残すという現実が淡々と暴かれていきます。忘れてしまいたい過去、
しかし一度言葉にしてしまったものは、もう頭の中から消す事は出来ないのです。


ミステリ風の展開で読者を引っ張っていくので、昨今話題の「チャイルド44」「ミレニアム」等の愛読者にも受け入れられるんじゃ
ないかと思います。あそこまで売れなくても、せめてもう少し注目されて多くの人に読まれてほしいと願いたくなる作品でした。