ドイツ映画祭2008、無事終了


●公式サイト:http://www.germanfilmfest.jp/


調子に乗って3日にも2本観てしまいました。初日と最終日だけ行くってズルして単位を貰おうと企む学生みたい…。


まず観たのはザ・ウェイブ −あるクラスの暴走(Die Welle)」
(●作品解説:http://www.germanfilmfest.jp/sakuhin.html#weibu



(映画予告編(英語版))


主演のユルゲン・フォーゲルはドイツでは有名な俳優さんで、主役/脇役、シリアス/コメディ、大人向け/子供向け、
なんでもどこにでも出てきますねー1年に何本撮ってるんだ?と思うくらい。ちょっとだけエキセントリックな役を演じさせると
本当に上手くって、今回のちと外れ者の教師役は正にハマリ役。途中で改心するのか最後まで暴走するのか全く先が読めなくて
ハラハラ感倍増でありました。


内容は色々考えさせられることの多いものでした。日本では中・高はまだまだ制服が一般的で、更に文化祭・体育祭などで団結心を
求められる事が多いわけですが、やっぱりそれって他の国から見るとヘンなものなのかしら?でも逆にそれを「ダサくてウザいけど
仕方ないもの」とある程度受け止めておくことが、それ以上の暴走を防ぐ抑制力になっているのかも…普段個人主義を主張している
青少年ほどナイーブに「独裁」を受け入れてしまうのかも?などなど。舞台挨拶にいらした監督&女優さんも「ある程度の団結心は
大切だけど、それが他人を阻害する方向に向かうのはいけない」という事をおっしゃってました。この辺の兼ね合いが難しいわけですが…。



エリート養成機関 ナポラ [DVD]

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監督の前作。ナチスものというよりは「いまを生きる」ぽい寄宿舎モノの変形みたいな青春映画です。



締めは映画祭の最終上映ともなる「HANAMI (Kirschblüten - Hanami)」
場内には「満席」の案内放送が流れました。
(●作品解説:http://www.germanfilmfest.jp/sakuhin.html#hanami



(映画予告編)


小津監督の「東京物語」を下敷きとした筋書きなのですが、家族の心のすれ違いや老夫婦の不器用な愛情表現などは洋の東西を問わない
ものだなあ…としみじみ観賞しました。この映画では特に妻に死なれてからのお父さんの心情が細かく描かれているのですが、これが
泣かせたり笑わせたりでホント切なかったです。観たら必ずこのお父さんが愛しくなってしまうと思います。


ただやっぱり「BUTOH」はちょっと引くなあ…昔でいうところの「暗黒舞踏」系の踊りが話の重要なモチーフになっているんですが、
今はもっと洗練された形に展開されてるんじゃないかなあ…、海外でのイメージはやっぱり未だこんな感じなのかしらん。あれじゃあ
お父さんが妻を引き止めるのも無理ないような。まあそのグロテスクさがある種の滑稽さも生んで、それはそれで良かったのですが…。


それまで見た4本と違ってあちこちで笑える場面が多かった映画でもありました。最初の方で、日本で働いている息子のところに行かない?
と持ちかける妻に対してお父さんが「向こうが帰ってきてくれた方が安上がりだ」と言う場面で笑いが起こったのは、ケチるのが趣味の
ドイツ人らしいなーという気がしました。私が個人的にウケたのは東京の息子のアパートに来たお父さんが「ここにはハエが居ないな…」
と漏らす場面。そういえばドイツってハエが多かったもんな、と妙に納得しました。


結局話題作が5本も観れて大満足の映画祭でした。来年もぜひ開催してほしいし、一般公開作も増えてほしいものです。