「Burning Bright」(トレイシー・シュヴァリエ)


Amazon経由で古本にて購入。久々の洋書(汗):


Burning Bright

Burning Bright


T・シュヴァリエは決して大好き!な作家ではないのに新刊をついつい読んでしまうのは、やっぱり取り上げる
題材に興味を惹かれてしまうから。今回も主題がウィリアム・ブレイクと知ったら俄然読みたくなってしまいました。


ブレイクといえば「無垢の歌」「経験の歌」で知られる詩人兼版画家。彼の画風がそれほど好きでない私には、
むしろ幻視者の印象が強い人。いつも頭の中では白髪&長い白髭の仙人のような風貌に変換されてましたが
考えてみたら若いうちからそんな格好なわけがない(焦)。今回ようやく人間・ブレイクと向き合えた気がしました。


とはいえ物語の主人公はブレイクではなく、彼の家の近所に住む子供達。家族ごと田舎からロンドンへ越してきた
Jemと、ちゃきちゃきロンドンっ子のMaggieが話の中心です。
舞台となる時代は1792-93年で、「無垢の歌」(1789)と「経験の歌」(1794)の狭間。この設定が効いてます。


●参考「無垢と経験の歌:ウィリアム・ブレイクの詩とイラスト」:http://blake.hix05.com/
(全ての版画、訳詩、原詩、解説まで揃ったお役立ちサイト。勉強になる!)


上記サイトにも書いてありましたが当時は幼い子供達も働くのは当然で、それも過酷な労働を強いられていたよう。
「無垢」では純粋に幼子への愛情を詠っていたブレイクが「経験」で憂いを帯びた作風に変化していったように、
主人公の子供達も様々な体験をするうちに生きていく厳しさを知り、次第に大人になっていきます。
ブレイク自身は要所要所で登場するも、基本的は後方に退いてそんな子供たちを見守っています。
幻視者だけあってちょっとミステリアスな存在。


といっても女工哀史のような陰鬱さは極力抑えられていて、家主のサーカス団長が繰り広げる賑々しいお祭り騒ぎなど
当時の大都会ロンドンの活気が興味深く書かれています。ブレイクの制作現場はもちろんJemの母と姉のボタン作りの
状景など、作者お馴染みの手仕事愛も満載で楽しめる一冊でした。



【参考】Dorset Buttons (The British Button Society)
色々出てくるボタンの形状が分からなくてネットで探してみました。なるほどこういうのを作ってたのね♪
見てるだけで楽しいです。