「訓読みのはなし」(笹原宏之)


図書館にて借出し:


訓読みのはなし 漢字文化圏の中の日本語 (光文社新書 352)

訓読みのはなし 漢字文化圏の中の日本語 (光文社新書 352)

たいていの日本人は、「山」を「やま」と読み、「犬」を「いぬ」と読むことに何ら疑問を持たないで
いる。しかし、この訓読みという行為は、実は相当驚くべきことを行っているのである。
仮にアメリカ人が「山」という字を「mountain」、「犬」を「dog」と読み、反対に「mountain」を「山」、
「dog」を「犬」と書き、さらに「my dog」を「my 犬」などと表記していたら、かなりの違和感を禁じ得ない
であろう。それと同等のことを古来、日本人は行い、定着させてきたのである。(p.94-95)


日本人として漢字と訓読みの関係について朧な知識は持っているけれど、新書サイズとは思えない豊富な用例と
詳細な説明に圧倒されました。オモシロ小ネタ満載で、読んだ後に「ねーねーこれ知ってる?」と誰かに話を
持ちかけたくなること必至。欠点はあまりに内容が多岐に渡り過ぎて、私の頭では体系的な理解が難しかった
ことでしょうか…。


「訓読み」というのはここでは日本語に限らず、外来表記の言葉を自国本来の発音で読むこと全般を指していて、
同じ漢字文化の影響を受けている韓国やベトナムとの比較も面白かった(両言語の知識があればもっと
興味深かったと思う)し、本家中国では形成文字(例:サンズイと「工(コウ)」という読み方で「江」)が
好まれるのに対し日本では会意文字(例:「木がたくさんあって「林」「森」)が好まれ、その嗜好に沿った
国字(日本独自の漢字)が発達しているという指摘も新鮮でした。


Web上での用例なども豊富で(回転寿司を「皿_皿_皿_皿」で表現するとか)非常に楽しく読ませていただき
ました。関連図書もこれから探る予定。