「オババコアック」(ベルナルド・アチャーガ)


図書館にて借出し。オババといっても沖縄とは関係ありません:


オババコアック

オババコアック


著者の故郷バスク地方の架空の村・オババを舞台とした幻想短編集ということで、郷土愛たっぷりの
マジカルワールドを想像していたら全然違いました。でもそこがかえって良かったです。


三部構成のうち、最初の「少年時代」で描かれる人たちは皆ある種の部外者で、拒絶とまではいかなくとも
よそよそしさを肌で感じ孤独感に悩まされています。次の「ビジャメディアーナに捧げる九つの言葉」では
(話自体は直接つながっていませんが)その閉ざされた扉が少しずつ開いていく様子が感じ取れます。
そして「最後の言葉を探して」では「私」と友人、伯父とその友人といった人たちの小咄合戦という形で豊かな
物語世界をのびのびと楽しむことができます。


終盤のエッセイ風の物語で、天使的博士が伯父の夢に現れてこう語ります:

「世界に存在するほかの言語や共通語は、おたがいに混じり、関係しあっている。だが、バスク語はただ一つの
もので、ほかのどの言語とも異なる。それが孤独の理由だ」
(略)
「ここがもっと豊かだった時代がある。今日では生命のない不毛の場所だが。だから、島はとても小さく見えたのだ。
けれども、フランス語や他の言語で書くように、バスク語でいろいろな本を書けば、バスク語はそれらと同様豊かで、
完璧な言語である。もし豊かでないとしたら、責任はバスク人にあって、その島にあるわけではない」


伯父「でもぅお話を書けって言っても、優れた作家なんてそうホイホイ現れるもんじゃないっすよ…」
天使的博士「じゃあどっかからパクッちゃえば良いじゃん」伯父「え!?!?!」


というわけで最終部はメタ小説論まで含んだ予想以上にスケールの大きな展開に。でも読後感はあくまで柔らか。
ゆったりと構えて読み通したいと思った作品でありました。




Pen (ペン) 2008年 5/1号 [雑誌]

Pen (ペン) 2008年 5/1号 [雑誌]

著者インタヴューが載ってます。