「バートルビーと仲間たち」(エンリーケ・ビラ=マタス)


図書館にて借出し:


バートルビーと仲間たち

バートルビーと仲間たち


なんとも奇妙なお話。
「書けなくなった作家」というのは世の中にゴマンといて、その中には苦し紛れに「書けない自分」を描写する事で
一冊書いてしまう人も多いけど、この作品はそれより一枚上手。25年間新作の書けない「わたし」は代わりに
同じように書けなくなった作家達のエピソードを、世界中からせっせと収集しはじめる。


書けなくなった理由は様々。想像力の枯渇もしくは爆発、言語表現の限界もしくは無限の可能性に対する絶望、etc。
駄作を送り出すよりは沈黙を守るという態度は高潔とも感じられるが、読みようによってはトホホな言い訳大全の
ようでもあって、大真面目なくせになんだかニヤニヤ笑えてしまう。


あとがきによると著者はマルセル・デュシャンとも親交があったようで、なるほどデュシャンというフィルターを
通すと、この「何も書かないことでかえって価値を高めた作家たち」の意義というか心意気というのが一層理解
しやすくなるかも。
著者自身は精力的に作品を発表し続けている人のようなので、ぜひ他の作品も翻訳が出てほしいものであります。