「砂時計」(ダニロ・キシュ)


「東欧の想像力」シリーズ第一弾、ということで読んでみました:


砂時計 (東欧の想像力 1)

砂時計 (東欧の想像力 1)


いやあ、これは手ごわかった…。決して読みにくい文章ではないのだけど
全六十六の断章が時系列も文体もかなりバラバラで、どういう法則で
全体が構築されているのかが良くわからなくて。
グロテスクなユーモアを湛えた表現や全体に漂う不穏な雰囲気は感知できるのだけど
自分が今どの時点に立っているのか、ふと我に返ると迷子のように途方にくれてしまう。
最後の方でやや全体像が見えてくるも、全てがカチッと収まる快感には程遠い。


読了後にネット上での訳者による非常に詳細な読解論文をざっと読んだけれども、
すり合わせて「答え合わせ」をするのも何か無粋だし…と今はまだ保留中。
ただこの迷子感覚は著者自身が意図したものだと知ってちょっと安心(?)。
もう少し時間を置いてから再挑戦しようと思ってます。



【参考】「『砂時計』あるいは世界の書物 −ダニロ・キシュ研究−」(奥彩子、PDFファイル)
http://src-h.slav.hokudai.ac.jp/publictn/50/oku.pdf
(これだけの作品をここまで読み解けるのは凄いなあ、とただただ感心。これが研究者というものですね)