「善き人のためのソナタ」(2006)


レンタルDVDにて観賞(独語音声・字幕無し)。日本では2007年のお正月第二弾として公開予定:



ASIN:3518457861 ●日本公式サイト:http://www.yokihito.com/


舞台は冷戦下の東ベルリン。やり手のシュタージ(国家保安庁)局員が、危険思想の持主と思われる劇作家とその恋人の監視を命じられて…という筋書き。


2時間以上という長さを字幕無しで観るのは私の語学力じゃキツイかな?と危惧していましたが、非常に丁寧な演出で、筋を追う分には全く問題はなかったです。映画を観るというより、きっちり構成された小説を読んだような感じ。


主人公のシュタージ局員は冷酷というよりは周囲に無感動・無関心なタイプ。
彼が監視する劇作家&女優の暮らしぶりは活気があって魅力的、というものでは決してなく、むしろ一個の人間として、あるいは創造者としての苦悩に満ちたものなのですが、正に彼らのその苦悩に心を揺さ振られていく主人公の姿に「な、なんてドイツ的な…」と唸ってしまったのは私の偏見でしょうか。でも生きる喜びにではなく苦悩の方に生の本質を読み取ろうという気質って、やっぱりドイツ人に馴染んでいるような気がしてしまいました。


シュタージの諜報活動も極めて正確に、綿密に描き込まれていると賞賛されていますが、20年前はこれが現実だったのか…と思うと溜息しか出ません。いやはやなんとも…。



原題は「Das Leben der Anderen(他人の生活)」で、どこからこの邦題が出てきたのかと不思議に思っていましたが、観終わってみると、元々はこっちの題名のつもりで作っていて、直前になって(それじゃあまりにベタだからってことで)変更したんじゃないかと邪推するくらい、この「善き人のためのソナタ」という言葉は劇中で効果的に使われていました。


これで音楽がヘボヘボだったら目も当てられないけど、さすがにその点も抜かりなく、劇中で弾かれるピアノ曲をはじめ全体を彩る音楽はみな印象的で美しいものでした。明日サントラを探しにいこうかな、などと考えています。