「Requiem」(2005)


DVDにて観賞(独語音声・独語字幕)。
今年のベルリン映画祭に出品され、主演女優の Sandra Hüllerが銀熊賞を受賞した話題作。
●公式サイト:http://www.requiem-der-film.de/


奇しくも同時期に同じ題材を扱った米映画「エミリー・ローズ」が公開されたことで、元の事件である「アンネリーゼ・ミシェルの悪魔祓い」についても詳細を知ることが出来ました:


●「アンネリーゼ・ミシェルの悪魔祓い」(シネマの舞台裏)
http://d.hatena.ne.jp/johnfante/20060530


重苦しい展開でしたが、予想していた
キリスト教に傾倒するあまり現実が見えない愚かな両親に間接的に殺された可哀想な女の子の話」
というのとは大分違いました。


主人公のミヒャエラ(が映画での名前)は、持病である癲癇と精神的な病に以前から苦しんでおり、そのこともあって母親とうまくいっていないのが冒頭から何度も提示されます。


持病を抱えたまま母親との関係を修復するには、先も見えずお金もかかる(保険がおりるかおりないかという会話が何度もあって金銭的負担も大きかったのだと思う)医学的な治療より、信心深い母親の期待(というのも変ですが)に添った「悪魔祓い」を選ぶ方が、彼女にはずっと楽だったのではないかという気がしました。


周りの人達も(実際の悪魔祓いの神父さんは別として)彼女が悪魔憑きだと本心から信じていたようではなく、実際何度も医学的治療の可能性を示唆しているのですが、やはり<主人公−母親>の関係悪化の過程で、流されるように悪魔祓いの儀式に逃げ込んでしまった、という印象を受けました。


主人公本人は普通に学生生活を送りたかっただけだろうし、周囲の人達も彼女のために良かれと思って行動しているのに、結果的には悲劇に突き進んでしまう…そういうことってあるよなあ、と深い溜息をついてしまいました。
キリスト教や悪魔などの表面上のモチーフに囚われずに見ると、意外と身近に似たような出来事ってありそうな気がします。




(ところで父親役のブルクハルト・クラウスナーは「グッバイ、レーニン!」や「ベルリン、僕らの革命」などにも出ているベテラン俳優さんですが、この人が出てくるといつも「シティーボーイズのきたろう」を思い出してしまうのは私だけでしょうか…ってこんなところでボケをかましてどうする!でも一度言ってみたかったのだ…)