「いつか王子駅で」(堀江敏幸)


まずは題名が良い。カバーも良い。中身はもっと良い。


いつか王子駅で (新潮文庫)

いつか王子駅で (新潮文庫)


読んでいて久々に「ああ今私は日本語を読んでるんだなあ!」と感じ入った作品。
もちろん海外在住といっても、ネットや積読本などを通して日々日本語には触れているわけだけれど、そういう事とは別に、言葉の持つ繊細さや深さに改めて気づかせてもらった気がする。
そして、何ということのない日常の中にふっと顔を出す「馬」のモチーフのなんと多彩で見事なことか。


王子駅にも都電荒川線にも一時期よくお世話になったので、このちょっとレトロな雰囲気が体にすんなり馴染むという面もあるが、著者は(私も)「古き良き昭和の風景」を懐かしむような歳じゃないはずなのに、この再現性は一体何なのだろう。やっぱり記憶力と描写力?


タイミング良く実家がカステラを送ってきたので、頬張りながらもう一度読み返そうと思ってます。あらゆる人に勧めたいけど、特にあらゆる意味でのお馬さん好き、そして変な乗り物に乗るのが好きな人には読んでほしいなー。