「ダークハウス」(アレックス・バークレー)


古本で購入。なぜ読む気になったか、は下記を参照ください:
http://d.hatena.ne.jp/shippopo/20060405


ダークハウス (柏艪舎文芸シリーズ)

ダークハウス (柏艪舎文芸シリーズ)


ある事件をきっかけに一年間の休職を取り、家族と一緒にNYからアイルランドへやってきた刑事・ジョー・ルケージィー。美しい自然と、口調は辛辣だが根は優しい住民達に囲まれた生活は理想的だったのだが…。



私はちゃんとしたミステリ読みではないのでミステリとしてどーか?という点に関しては自信が持てないが、割とオーソドックスな展開ではないかと思う。
ただ殺人場面の陰惨さと、それ以外の場面での日常会話の軽妙さとを両方うまく書き分けているのに感心させられた。村人達の会話なんてメイヴ・ビンチーの小説みたいに機知に富んでいて、妙におかしい。


この対比が際立っているので、後半どんどん残酷さが増していくと、なんだかアメリカの毒にアイルランドが段々侵されていくような不快感を覚える。まあアイルランドびいきの偏見かもしれませんが、あんまり人がいっぱい死ぬ話は好きじゃないんで…。


柏艪舎という出版社は今まで知らなかったが、どうやら札幌に本社があるらしい。地方出版で小説、しかも翻訳ものと手掛けるというのはなかなか大変なことだと思う。その勇気に拍手を送る一方で、この手の「エンタメ」として売り出せる作品は大手出版社で文庫で出した方が捌けるような気もして、ちょっと心境は複雑…だってネットで検索してもほとんど読者の感想にヒットしないのだ。もっと単純に売れていいと思うんだけどねえ。


ちなみにタイトルの「ダークハウス」とはアイルランドで主人公一家が住みつく「灯台(Lighthouse)」をもじったものだろう。そう思って表紙を見ると、あ、この針金細工は灯台だったのか。装丁は鈴木成一デザイン室で渋いです。