「魔法の声」(コルネーリア・フンケ)


日本人向け図書室にて借出し:


魔法の声

魔法の声


舞台が図書室/図書館/書店/古本屋。
主人公/主要人物が本好き。
本/本にまつわる話が沢山出てくる。


そういうお話って反則だと思いませんか?本好きなら好きになっちゃうに決まってるじゃないですか!


…と怒っちゃうくらい本好きのツボをしっかり押えたファンタジー。朗読するとその本の世界から何かが飛び出して来てしまう能力(その代わりこの世界の何かが物語の世界に吸い込まれてしまう)を持ったモーと、その娘メギーの冒険物語。筋書き自体もドキドキハラハラと飽きさせないが、全編に本好きに対する決め台詞というか殺し文句が満載で、思わず顔がにやける。
例えば:

旅行に行くときには、本を携えていきなさい。モーが箱を作りあげたとき、最初の本を箱の中に置きながら、そう言っていた。「本を携えていけば、不思議なことが起こる。その本がおまえの思い出を自分の中に吸い込むんだ。あとで本を開いてみるといい。そうすれば、本を読んだときの場所におまえは帰っていくだろう。本の最初の言葉を声に出せばいい。それだけで、すべてがよみがえってくる。風景がよみがえる。においがよみがえる。本を読みながら食べたアイスクリームすらよみがえってくる。わしの言うことを信じろ。本というものはハエ取り紙のようなものなのだ。本ほど、思い出をつかんで離さないものはない」
モーの言うことは多分本当なのだろう。だが、メギーがお気に入りの本を旅行に携えていくのには、別の理由があった。本は故郷のようなものだった。懐かしくて、心強い。見知らぬ土地で、よく知ったものに出会える。なじみの声を聞ける。友人と会える。けんかをすることのない友人、頭のいい友人、力強い友人に会える。悲しみを振り払ってくれた。メギーが退屈しているときには――― モーがさまざまな素材を使い、歳月と人間の指先で朽ち果てたページを補修しているときには−−−、退屈を追い払ってくれた。(p.29-30)


ああーこんなこと言われたら私、もうメロメロでございますよ。



Tintenblut

Tintenblut


続編も絶賛発売中。さて日本語版が出るまで待つか、それともさっそく英語版で読むか、はたまた無理してでも原書のドイツ語版に挑戦するか…悩むところであります。