「素粒子」(ミシェル・ウエルベック)


先日公開された映画があまりにも不評なので、かえって原作を読んでみたくなって購入。
すいませんね天邪鬼で。


素粒子 (ちくま文庫)

素粒子 (ちくま文庫)


スキャンダラスな小説という噂は聞いていたので割と身構えて読み始めたのだが、読了して心に残ったのは意外にも著者の終始徹底した真摯さ、なのであった。


50年代以降のフランス国内風俗史総まくり、という意味でも興味深く読んだ。かなり具体的な固有名詞がバンバン出てきて「同世代の同国人なら当然これ分かるでしょ」みたいな挑発を感じる。(訳注が無かったら私なんかお手上げだ)
特にアメリカから多大な影響を受けた(であろう)性革命やヒッピー・ムーブメントが後々に与えた傷痕というか屈折した感情が率直に描かれているところが非常に興味深い。これ、主人公二人と同世代(50年代後半の生まれ)、もしくは二人の母親の世代の人が読んだらかなりイタいものがあるんじゃないだろうか。そのくらい具体的なのだ。


こんなに「フランス」であることを強調している作品を、なんでドイツ人がドイツ映画として製作しようと思ったのか疑問。もちろんお隣だからかなり共通性もあるんだろうけど(実際ドイツでも原作は非常に物議をかもしたらしい)。
なーんか映画の紹介文を眺めてる限りでは、ヌーディストビーチとかのセクシュアルな部分を強調しすぎている気がするんだよね…まあDVD化されたら比較のために観てみることにしましょう。


●映画公式サイト(独語):http://elementarteilchen.film.de/


*題名の基となっている「コペンハーゲン解釈」については、下記サイトの説明が私にはまだ分かりやすかった:
「世界は一つしか存在しないのか」(永井俊哉ドットコム)
http://www.nagaitosiya.com/b/many_worlds.html