「迷路」(T・フォンターネ)


迷路 (岩波文庫 赤 468-3)

迷路 (岩波文庫 赤 468-3)


19世紀後半、ベルリンを舞台とした身分違いの恋。
この時代、階級が違えばすなわち悲恋に終わる事は避けられない話だ。


しかし小説の中では一切修羅場は演じられない。悲恋は悲劇にすり替わらない。
登場人物達は大変良識的に、理性的に対応する。
かといって、それは恋人同士の情が薄かったからではない。想いはいつまでも残る。
読了後も、終わるしかなかった恋の切なさに胸が痛くなる。


一見何も起こらなかったかのような、普通の人々の日常の中に潜む細やかな感情。こういう話を書くのは実は結構難しいと思う。ううーんフォンターネ、私、結構好きかも…。