「告白」(町田康)


bk1ポイントで購入。


告白

告白


町田康作品はデビュー当時からちまちまと読んでいるが、芥川賞受賞の頃は正直「このままこういう特異な文体で押していくだけなのかなー、ちょっとマンネリ化しちゃうかなー」と少々危惧していた。(勿論あの文体だけでも大したものなのだが)
しかしその特異な文体をそのまま時代小説に持込む、という大技が今回見事にハマっている。
うーん、なるほどねえ(感嘆)。


思っていることがうまく言葉にならないもどかしさに悶える事は誰にもあると思うが、この小説の主人公・熊太郎はそれが少々極端で、ぐるぐる頭の中で反芻しているうちに全く逆の事を言ってしまったり、全然関係ないことを呟いて誤解されたり、ぐるぐるしているうちに実際の行動を起こすタイミングを失ってますます自分を追いつめてしまう。
なんかマンガ「東京大学物語」の主人公を思い出した。現代ならそれでも表面上エリートの一人として生きる可能性もあるだろうけど、明治初期の農村ではこんな近代的自我の悩みを抱えた者は外れ者になるしかなかったのだろう。不憫だ…。


題名にもうちょっとひねりが欲しいと思ってたけど、この「告白」というのはやはり熊太郎の最期の一言(いや二言?)を指しているのだろうか。そう考えるとなかなか深い。
最期のあの台詞にはガツンとやられました。もうなんか本当に不憫で泣けてくるよ…。