「アンボス・ムンドス」(桐野夏生)

日本人向け図書室で借出し。


アンボス・ムンドス

アンボス・ムンドス


最近の桐野夏生は作風がどんどん自由に、大胆になってきて、一編一編にとてつもない凄味を感じる。もちろんそれだけの分、彼女も必死に闘っているわけだ。その姿勢がたまらなくカッコイイ。


ひっそりとした悪意に満ちた表題作も良かったが、個人的に一番面白かったのは「浮島の森」。元になっているのはある文学史上の事件だが、小説家とその家族の緊迫した関係が浮かび上がってきて興味深い。どこまでが史実に基づいてるのかあとで調べてみよう。(しかし題名だけはとってつけたような感じがする…)

またしても、作家の正直。悪人でなければ、小説家にはなれないのだった。そして悪人にとことん付き添い、共に生きる女もいる。その女の覚悟も、生半可なものではない。(p.172)


…いやはや。



●「本の話 pick up:桐野夏生の衝撃」より講演抄録(文藝春秋
http://www.bunshun.co.jp/pickup/kirino/kouen.htm