「Jonathan Strange & Mr. Norrell」(読書中)


またまたとんでもなく長い洋書に手を付けてしまった(ペーパーバックで1000ページ以上!)ので、まだ第一部読了の段階ですが忘れないうちに現時点の感想など。あとで変更・削除するかもしれませんが御了承を。


Jonathan Strange and Mr. Norrell

Jonathan Strange and Mr. Norrell

公式サイト:http://www.jonathanstrange.com



2004年の発表以来大人気のベストセラー、しかも相当数の文学賞を受賞している大型歴史ファンタジー。出版社が同じこともあって「大人向けの『ハリー・ポッター』」とも称されている…という前情報を持って読み始めたけれど、あれれ、血沸き肉踊る魔法と冒険の世界とはちょっと趣きが異なるみたい。だって最初からこんなノリなのだ:

They were gentlemen-magicians, which to say they had never harmed any one by magic --- nor ever done any one the slightest good. In fact, to own the truth, not one of these magicians had ever cast the smallest spell, nor by magic caused one leaf to tremble upon a tree, made one mote of dust to alter its course or changed a single hair upon any one’s head. (p.3)


(彼ら(ヨーク魔術師協会の人達)は「紳士的」な魔術師で、それはつまり魔法によって何人にも危害を加えたことがないという事だが、かといって誰かにほんのささやかな善行を施したこともなかった。実際、正確に言えば、彼ら魔術師の一人としてちょっとした呪文を使ったこともなければ、魔法で樹上の葉っぱ一枚揺らしたことも、埃一つ漂う向きを変えたことも、頭上の髪の毛一本変化を与えたこともなかったのだった。)

…それって魔術師って言うの?? ひょっとしてこのmagicianて手品師のことなのかしらん?段々不安になってくる。


じゃあこの魔術師協会の皆さんが何をしてるかというと、魔法に関する文献をひたすら読みまくって、その歴史と理論についてあーだこーだと役に立たない議論に時間を費やしているのである。
この小説には魔術師協会の人に限らずとにかく紳士(gentleman)がわらわら出てくるのだけど、これが皆さん別に悪人じゃないんだけど暇人というか無駄というか邪魔というか、なんか「おじさん改造講座」(古いね)に投書したくなるような困ったおぢさん達ぞろいなのである。これで大丈夫なのか大英帝国よ?!


そんな中でただ一人、協会にも属せず密かに魔法を実践していた男、それがノレル氏。彼も本当は一人でこつこつ魔法を研究していたい質なのだが、フランスとの戦争で苦境に立たされた英国を救うために自分の能力を用いるべく政府に働きかける。
かといってノレル氏が至極高潔な人物というわけでもなくて、偏屈でエゴイストで自分以外に魔術師がいたら早めに潰しとこうとか考えてる、これまた扱いにくいおぢさんだったりするから面白い。


そんなおぢさん達が中心だから、話はなかなか前に進まない。魔法一つ実行するにも根回しやらおべっかやら駆け引きが必要なめんどくさい世界。でもそのいかにも有りそうな大人達のすったもんだ振りがおかしくてついニヤニヤしてしまう。なるほど、このへんが「大人向け」ってことなのかしらー。


もう一人の主人公ジョナサン・ストレンジ君は、第一部の終章でようやく本格的に登場、好きな女性の気を引くために魔術師になることを決意する。さーて、第二部からはめくるめく魔法と冒険の世界に突入するのか?(無理かも)