「モーダルな事象」(奥泉光)

モーダルな事象 (本格ミステリ・マスターズ)

モーダルな事象 (本格ミステリ・マスターズ)

鳥類学者のファンタジア (集英社文庫)」のお気楽ファンタジーを筆頭に、幻想系純文学の「バナールな現象 (集英社文庫)」、ミステリ風「グランド・ミステリー〈上〉 (角川文庫)」「グランド・ミステリー〈下〉 (角川文庫)」、漱石パスティーシュ風「『吾輩は猫である』殺人事件 (新潮文庫)」と奥泉光作品はどのジャンルでもかなり御贔屓の私だが、それら全ての要素をふんだんに盛込んだ今回の作品は、欲張りすぎたのか読後感はそこそこ、といったところ。もちろん奥泉光の「そこそこ」は、世間の標準と比べるとかなりの高レベルなのだけど。本格ミステリ好きはこういうのの方が良いのかな?


お気楽系好みの私としては、やっぱり北川アキ&諸橋倫敦のパートが読んでいて楽しい。「元夫婦刑事(めおとでか)」っていう響きが良いよね!


巻末のインタヴュー(?)で本人も述べているように、「鳥類学者のファンタジア (集英社文庫)」は著者本人が書いててとっても楽しかったんだろうなあ、というのが文章からひしひしと伝わってくる、読者としても幸福感を充分に味わえる作品だった。
このあと著者としてはちょっと意識的に気を引き締めて著述に励んでいるようだけど、一ファンとして私はあえて言いたい:「いいんだよー光ちゃん、もっともっと幸せになっても!」