「六本指のゴルトベルク」(青柳いづみこ)


図書館にて借出し:


六本指のゴルトベルク

六本指のゴルトベルク


ピアニストが小説内に登場する音楽・演奏場面のリアリティを読み解いたエッセイ。さすがに説得力があります。
私自身は周りと比べると音楽は聴かない方だと思いますが、音楽小説は好きなので楽しく読めました。


特に印象的だったのは映画にもなったイェリネク「ピアニスト」を高く評価していること。私なんかはあらすじを聞いた時点で
うんざりとしてしまっていたのですが、著者によると主人公の性格形成はピアニストならさもありなんと納得がいく
ものだということ;

(略)もともとスポーツ選手や演奏家は、トレーニングや練習という名目で自分自身をいためつけるのが習慣になっている
種族だ。チェルニーにしてもハノンにしても、習得にはある程度の苦痛を伴う。物理的な苦痛もあれば、幼いころからの
訓練によってもたらされる精神的な苦痛もある。
 親や先生、コーチへの精神的隷属も当たり前。
(略)
精神的に未発達だからといって偉大な音楽家にはなれないというわけではない。(略)悲劇なのは、エリカ(引用者注:主人公)
のように、ピアノの勉強で強迫性障害を昂進させられながら、ついにプロになれなかったケースではないだろうか(きっといる、
ものすごくたくさんいる)。(p.65-66)


うーんそうですか。でもいやだなあ…。