「自壊する帝国」(佐藤優)
図書館より借出し。先日読んだ「国家の罠」で佐藤氏は外交官としての職務を解かれたわけだが、
じゃあそれまで外務省と勤務先のロシアで彼は一体どんなことをしていたか?という話を、
当時知り合った人々との交流を中心に綴っている:
- 作者: 佐藤優
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/05/30
- メディア: 単行本
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著者のソ連−ロシア駐在期間は1987−95年、丁度ソ連崩壊の現場に居合わせたわけで、さすがに当時の描写は
臨場感にあふれている。登場人物もみな一癖も二癖もある人たちばかり。
それにしてもソ連の捩れっぷりは凄まじい。
例えば最初の方で、元々大学で神学専攻だった著者は留学先のモスクワ大学でも同様の勉強を
独自に進めようとするのだが、その時見つけたモスクワ大学の学科名が「哲学部科学的無神論学科」。
共産主義では表向き宗教は否定するためにのみ存在するものなので、それをいかに科学的・弁証論的に
否定するかを研究するための学科なのである。
といっても実際には熱心な信者が集まり、西欧の最新情報を入手し、批判するという名目で紹介する
唯一の場となっている。
「本音」と「建前」もここまで分業化されているとお見事と言うしかない。
しかも一時が万事全てこの調子なのだから、ずっと居たら私なんかダブル・バインド状態で気が狂いそうだ。
(崩壊ではなく)自壊、という言葉がズンと胸に沁みた。