「Arthur & George」(ジュリアン・バーンズ)


2005年ブッカー賞最終候補作。ギルバート&ジョージとは関係ありません(古い?)。


Arthur & George

Arthur & George


うーん、いや普通に面白いんだけど…バーンズ先生だったら、もうあと一ひねりは欲しい!と思ってしまうのは欲張りなんでしょうか。


20世紀初頭、英国の一地方で家畜が殺傷されるという事件が相次いで起こり、かなり杜撰な捜査の結果、インド人の父とスコットランド人の母を持つ弁護士のジョージが逮捕・投獄される。事件の内容を知ったアーサー・コナン・ドイルは持ち前の正義感と論理性で彼の無実を証明しようとする…。


という大まかな流れは史実に忠実に展開しているようだ。
勿論これはあくまで物語なので、各登場人物はバーンズの想像力を持って非常に膨らみのあるキャラクターになっている。


ただやっぱり話が話だけに、全体が「いわゆるミステリ調」で進んでいくので、本来ミステリ読みじゃない私はそのへん退屈してしまったりするのだな。でもじゃあ一般的なミステリ読みには面白いのか?と言われるとそれもちょっと疑問だったりして。


もちろんバーンズ先生もミステリが書きたかった訳ではなくて、事件の背景にある世相とか時代精神とかを表したかったのだろう、ということは事件が終わってからの最終章を読むと特に良く分かるのだけど、超有名人のアーサーと一般人のジョージを無理して並列化したことで焦点がボケちゃったという感じがする。


いっそのことジョージを通じて売れっ子作家の奢りを指摘する、裏「カポーティ」みたいな話に徹しちゃえば私好みだったのかもしれない(邪悪?)けど、実際のアーサー・コナン・ドイルは本当に紳士(と言うか騎士? Sirの称号も貰ってるし)だったようなので、そういう展開にはひっくり返っても成りそうにないのであった。
とりあえずコナン・ドイルのファンは読むべし、でしょうか。


●参考:"Arthur Conan Doyle"(WIkipedia):
http://en.wikipedia.org/wiki/Arthur_Conan_Doyle