「A Short History of Tractors in Ukrainian」(Marina Lewycka)


A Short History of Tractors in Ukrainian (Penguin Essentials)

A Short History of Tractors in Ukrainian (Penguin Essentials)


エブリシング・イズ・イルミネイテッド」「ペンギンの憂鬱 (新潮クレスト・ブックス)」と、最近ウクライナ絡みで面白い小説に当たっているし、先日選挙もあって色々政治情勢の報道が活発だし(さすがにティモシェンコ萌えでは無い)、何と言っても個人的に今年のドイツW杯の見どころはシェフチェンコ率いる初出場ウクライナがどこまで頑張れるか、だと思っているので、題名につられてついつい買って読んでしまった。
うーん、でも私の好みからするとちょっと軽めかなあ。


老齢の父親の再婚を阻止しようと子供達があれこれ策略していく中で、これまで封印してきた家族の歴史が改めて浮き彫りになる…という設定は大昔にガッコのゼミで読んだ「メンフィスへ帰る (Hayakawa Novels)」と酷似していて、パロディなのかと思ってしまった。
「メンフィス…」は本当に陰鬱な話で(ゼミでいじめられたから余計そう思うのかもしれんが)、それに比べると今回の本は随分軽くてすいすいっと読める。その分物足りなさも感じる。


表題の「トラクターの歴史」とは父親が書いている一種の論文で、トラクターの開発を通じて農民が額に汗する素朴な形態の農業から機械の導入による集約農業(「コルホーズ」なんて単語を聞いたのは久しぶりだー)への変化、更にはトラクターから戦車への技術発展とそれに伴って激化する戦争への言及へと繋がっていく。発想は非常に面白いのに、著者の力不足で充分書ききれてない、という印象が強い。結果としてエピソードの一つ、くらいの位置づけに落ち着いてしまったのが残念。


あと不満なのは再婚相手のヴァレンティナが女性から見て本当にどうしようもない女性(男性から見ると夢の女性?)ということ。姦婦ぶりを発揮しつつも実は…という何らかのオチを期待していたんだけど、最後はギャアギャアうるさいだけの女になってしまった。


ヴァレンティナとの闘争?の中で今まで険悪だった姉妹が少しずつ理解を深めていく部分は、ありがちとは言えやっぱり心温まる。同じ家族の出来事でも、10歳も歳が違えば全然物の見方が変わってくる、というのは良く分かるなあ。


まあこれからもウクライナの歴史などには目を向けていきたいと思っております。