「オスカーとルシンダ」

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驚くほど原作の雰囲気を(あの奇妙なノリも含めて)非常に上手く伝えている映画。それでいて映画的な魅力も充分に備えている。特にガラスの教会や、後半の道中の厳しさなどは正に映像で訴えるにふさわしい美しさだ。静粛にして壮絶なクライマックスには思わず唸らされた。


ケイト・ブランシェットはこれが実質のデビュー作だが、もう当時からオーラ出しまくり!で、これを観た後では彼女以外のルシンダはもう考えられない。
レイフ・ファインズも純粋さと狂気が裏表、みたいな表情がとても上手い。この二人を観ているだけで満足できてしまうなあ。


最後の最後にちょっとだけ原作から変更した部分があるが、これくらいは許されるよね、というか、このくらいしてくれないとルシンダがちょっとカワイソすぎる…。





オスカーとルシンダ

オスカーとルシンダ

(2003年8月の読書日記より)
父親から厳格な教育を受け、風変わりな牧師となったオスカー。彼にとってギャンブルとは神からの啓示であり、人生そのものが賭けである。
進歩的な考え方を持ち、親からの遺産を持て余した末にガラス工場の経営に乗り出すルシンダ。彼女にとってギャンブルとは旧習に囚われた社会や人々から逸脱すべき手段であり、一種の自己解放である。


前半は19世紀半ば、一癖も二癖もある人達に囲まれた二人の奇妙な生立ちが、ゆっくりとじっくりと語られる。実際に二人が出会うのは物語のほぼ中盤、イギリスからオーストラリアへ向かう船の中だ。


そこからは二人の凸凹ギャンブル放浪記…という話には全然ならなくて(そういう展開も面白かったと思うのだが)、お互いの感情の読み違いやら周囲の思惑やらいろいろと紆余曲折を経たあとで、何故かルシンダの恋人(とオスカーが思い込んでいる)が赴任したオーストラリア奥地までガラスの教会を運び込む、という壮大な賭けに発展してしまう。


二人ともこの賭けを果たすことが自分の愛情を証明すること、と思いつめており、それゆえに当初は楽観的だった奥地への旅が、終盤にはとてつもなく壮絶な幕切れへとなだれこんでいく。どことなく映画「フィッツカラルド」を思わせる、うっすらと狂気を帯びた熱気が漂ってくるのだ。

http://members.aol.com/shippopo/diary200308.htm