「ベル・カント」(アン・パチェット)


図書館より借出し。在独中は機会がなくて手に取れなかったこの種の昔の本(といっても3,4年前)も
これからは少しずつ読んでいこうと思ってます:


ベル・カント

ベル・カント


私自身は全く音楽的才能に欠けているけれど、世の中には確かに音楽に愛されている人が存在して、
時にはそういった人の助けを借りて私ですら音楽に身を任せ、至福の時間を味わうことが許される。
そんな体験をした事のある人なら、間違いなくこの物語のカタルシスを理解できると思う。


副大統領官邸のパーティに押し入り、大勢の人質を抱えたテロリストたち。
その人質の一人は有名なソプラノ歌手だった。
彼女の生の歌声を聴いた時から、確実に彼らの関係が変化しはじめる…。


ペルーの日本大使公邸占拠事件を踏まえながらも、展開するのはあくまでベル・カント唱法のように
現実離れした、美しいファンタジー。後半ちょっとだれた感じがするのは、著者自身も
このファンタジーを終わらせたくない、できるだけこの至福の時を長引かせたいと願っていたから
ではないか、そう思いたくなるような綺麗な小説でした。