[映画]ドイツ映画祭2019(於:ユーロスペース)
毎年いつやるの?どこでやるの?そもそもやるの?、とヤキモキさせられるイベントですが、今年は渋谷のユーロスペースで約1週間にかけて開催。がんばって5本観てきました(が、仕事帰りで疲れていたので結構途中で寝ていた...)。以下、覚え書き程度の感想:
「未来を乗り換えた男」(原題:Transit)
「東ベルリンから来た女」や「あの日のように抱きしめて」など、独特の世界観を持つペッツォルト監督の作品。今回も、話が進んでも時代背景がよく飲み込めずモヤモヤしたまま観了。
あとで調べたら第二次大戦時代と現代の難民問題を重ねた、との解説で、つまりパラレルワールドというか寓話的な空間と割り切って観ればよかったのでしょう。時間も空間も登場人物もみな原題の"Transit"、つまり乗り換え前でどこにも所属できないまま待機を強いられている「宙づり」状態そのものを描きたかったのだと思えば、それは上手く表現されていると思いました。
でもそれならこの邦題はちょっと的を射てないな…。
あと個人的にマリーみたいな女性は全く理解できないので観賞中「なんだおまえは!」とずーっと思ってました。世の男たちはどうしてこういう女に弱いのかなあ?(まあ寓話よね寓話っ)
「僕たちは希望という名の列車に乗った」(原題:Das schweigende Klassenzimmer)
実話を元にした、という但し書きがなければ「ちょっと分かり易すぎる展開」と思ってしまうかも。悪役である体制側に、高校生とその家族がどこまで純粋に立ち向かえるか、という筋書き。ちょっと演出が舞台劇っぽいかなあ。
特筆すべきはやはり若き役者さんたちの熱演ぶりで、なかでも主演のテオとクルトを演じた2人の絡みは、ずっと観ていたかったくらい。もちろん見た目もいいし、これから人気が出そうです。
個人的には、ご贔屓のフローリアン・ルーカス君が頼りない校長先生役で出ていたのがツボでした。
しかしこれも邦題がやや的外れというか…。最後まで観ると「まあそういうことか」とも思うんですけど、それでもしっくりこない感じ。原題は直訳すると「沈黙(黙祷)する教室」で、ケストナーの名作「飛ぶ教室」を意識しているのでは、とのこと。
「希望の灯り」(原題:In den Gängen)
クレメンス・マイヤーの短編が原作。旧東独の巨大スーパーで働く労働者階級のひっそりとした日常とささやかな恋愛、という地味地味な題材ながら、卓越した音楽効果とバッチリ決めた構図でなんとも魅力的な映画に仕上げてきました。久しぶりに映画を観る楽しさを満喫したなー。
特になんといってもフォークリフト!スーパーの狭い通路を軽やかに駆け抜けるフォークリフトが快感で、運転オンチの私ですら「わーこれは乗り回したいわ!」と思いました。はたらくクルマ好きには是非観ていただきたいです。
あと、昔に観たおバカなPVを突然思い出したので忘れないように貼っておこう:
Sportfreunde Stiller - Ich, Roque
(映画とは全く関係ありません。でも何度観てもおバカすぎて好きだ)
- 作者: クレメンスマイヤー,Clemens Meyer,杵渕博樹
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原作を含む短編集はこちら。
(追記:原作を再読。やっぱりすごく地味な話でした(笑)が、映画は主題を押さえつつキレイに磨きあげたという印象。うまいなあ)
「ソーシャルメディアの"掃除屋"たち」(原題:The Cleaners)
誰もが気軽に情報を発信できる一方で、過激・残酷な内容に歯止めをかけるのが難しいSNS。コンテンツ検閲という業務を通じて見えてくる「表現の自由」の線引きの難しさ。正攻法のドキュメンタリーで、(実は半分くらい寝てしまいましたが)訴えたいことはきちんと受け止めたつもり。
「キャスティング」(原題:Casting)
ファスビンダー映画のTVリメイク化が決まるも、監督は主演女優がなかなか決められず… という制作の舞台裏を皮肉たっぷりに描いた作品。役者の本音と建前、そして映画脚本の台詞が重なり合って、見応えのある仕上がりに。相手役の代役を務めるケルヴィンさんの振り回されぶりが、なんともオモシロ悲しくてよかったです。
最近映画を観るのはネット配信ばかりで映画館にはとんとご無沙汰だったのですが、やっぱりこうやって足を運ぶのっていいですね(寝てましたが…)。特にユーロスペースは学生時代お世話になった(といっても当時は同じ渋谷区でも桜丘の方にあったはず)ので、こうやって頑張ってくれているのは感慨深い。またいろんな映画が観たくなりました。
ブラザー・フロム・アナザー・プラネット <HDマスター版> [DVD]
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旧ユーロスペースでこの映画を観たのを強烈に覚えてます。ちょうど名画座からミニシアターへと興行形態の流れが移っていった時期。学生時代に両方とも体験できた自分は幸せだったなあと今でも思っています。