「Inch Levels」(Neil Hegarty)
昨年 Irish Times紙のBook Clubにも選ばれた気鋭の新人、ということで読んでみました:
- 作者: Neil Hegarty
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舞台はデリー州(北アイルランド)とドネガル州(アイルランド)の州境(国境ともいえる)、と言うだけで複雑な歴史が推測できそうな地域。さらにフィヨルドという独特の地形を活かして第二次大戦中は軍港としても栄えたとのこと。そのあたりの歴史は物語を語る際に随所に差し挟まれる。
物語は少女の突然の失踪、そして数日後の遺体の発見から始まる。明らかに殺人、しかし手がかりは何もなく、現場周辺の住民の間に悲しみと空しさ、そして怒りが広がっていく。
…ここから事件解明に向けて進んでいくのかと思いきや、話は突然数年後、ガンで死期間近の若者とその家族を中心に回っていく。愛情表現が下手でしばしば話し相手を傷つけがちな母親を筆頭に、存在感の薄い父親、優しいが情緒不安定な姉といけ好かないその夫、そして血縁でもないのに何故か常に母親と一緒にいる女性、といった面々のそれぞれの過去が、時代を行きつ戻りつしながら描かれる。
いやそれはそれで充分面白いんだけど、でも殺人事件はどうなったの?この一家と殺された少女の間に直接的な関係は何もない。同じ地域に住んでいて、事件に関する一連の報道をみな気にかけていたというくらいで…。
、と思ったら、終盤に思わぬ接点が出てきて一応ミステリとしてはオチがつく。イヤミスですけどね。
登場人物の中で一番印象的なのはやっぱり母親。最近読んだコルム・トビーン『ブラックウォーター灯台船』の母親にも通じる、愛情表現の不器用さ。アイルランドの母親って『アンジェラの灰』的に愛情深くおおらかなイメージがあるけれど、その陰には本来家庭向きでない女性(私だ)の人一倍の苦労もあるんだろうなあ。
- 作者: コルムトビーン,Colm T´oib´in,伊藤範子
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- 作者: フランク・マコート,土屋政雄
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しかしアイルランド作家の青田買いはやはり収穫がある。日本にも紹介されてなくはないんだけど、もっとまとまった形で意識的にキャンペーンをやってほしいものです。(その点、韓国の現代文学は今とても良い形で紹介されていてうらやましい)
- 作者: ドナル・ライアン,岩城義人
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- 作者: コリン・バレット,田栗美奈子,下林悠治
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- 作者: サラボーム,Sara Baume,加藤洋子
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