「The Little Red Chairs」(エドナ・オブライエン)

The Little Red Chairs (English Edition)

The Little Red Chairs (English Edition)

アイルランドの田舎町に住みついた、モンテネグロから来たというVladという男。人当たりの良さの一方でどことなく謎めいた雰囲気に、町の住人達(特に女性陣)は大いに興味をそそられるのだが、実は彼には冷酷な戦争犯罪者という裏の顔があった…。


てっきりこのVladと町の人間との心理的なせめぎ合いが中心になるのかと思っていたら、既婚ながらも孤独感を抱える町一番の美人・Fidelmaが彼に惹かれ、しかしその恋は凄絶な事件を引き起こすという思いがけない展開に。しかも第二部では逃げるように町を出たFidelmaが、ロンドンで多種多様な人種と境遇の人たちの間で厳しい経験を積み重ねるという、自分としては予想外の方向で話が進んでしまって置いてきぼりにされたような読後感。面白くなかったわけではないのだけど…。

デビュー以来、エドナ・オブライエンの作品は常に大いなる敬意とある種の憎しみとをもって受け止められてきた。
問うに値する本質的な問いを投げかけるがゆえに尊敬され、見たくないものの直視を迫るがゆえに反感を抱かれる。
(『いま、世界で読まれている105冊』P.119)

いま、世界で読まれている105冊 2013 (eau bleu issue)

いま、世界で読まれている105冊 2013 (eau bleu issue)

↑の中の一文。この本では前作"In the Forest"が紹介されているのですが、これがまた面白そうなので近々読んでみたいと思っています。




1960-70年代には数多く翻訳されていた彼女の作品。当時の風潮としてフェミニスト的な文脈から紹介されていたのかな?それが災いしたのか今では新作小説の日本での紹介は滞り、旧作もほぼ入手困難。それはちょっと残念なのでちまちまフォローしてみるつもり。