「Funeral for a Dog」(Thomas Pletzinger)
kindle版で購入。2013年国際IMPACダブリン文学賞候補作(longlost)から、面白そうだけど早々日本語版が出なさそうな(翻訳が出ると原書を読む気が失せるので)ドイツの現代作家作品を選んでみました:
- 作者: Thomas Pletzinger,Ross Benjamin
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原書はドイツ語:
- 作者: Thomas Pletzinger
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ジャーナリストのダニエルは上司兼妻のエリザベスの命令で、絵本作家スヴェンソンの取材にイタリアへ赴く。突然出版された一冊の絵本が大ベストセラーとなったスヴェンソンだが、その私生活は謎に包まれているのだ。
道中たまたま一緒になった女性テュリとその息子もどうやらスヴェンソンの客人らしい。しかし何とか会えたスヴェンソンはなかなか自分のことを語らず、ダニエルも答を上手くはぐらかされたままズルズルとスヴェンソンの家(別荘?)に滞在し続ける。果たしてテュリとスヴェンソンの関係は?そしてダニエルは自分に必要な答を手に入れることができるのか…。
なかなかスヴェンソンとテュリの関係がはっきりしなくてどうなることかと思いましたが、二人の間にもう一人フェリックスというスヴェンソンの親友がいること、その3人はブラジルである体験を共有したこと…などがゆっくりと明らかにされていきます。
表題の「犬」とは、スヴェンソンが飼っている3本足の犬・ルアのこと。何故3本足なのか、その理由もなかなか明かされないわけですが…。
この3人のブラジルでの体験は、まあ映画で言えば『冒険者たち』+『シティ・オブ・ゴッド』+『アモーレス・ペロス』みたいな感じ?熱くて面白いけれど、それだけでは正直私の好みではない:
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この小説を特異なものにしているのは取材側のダニエルの存在。民俗学者を目指しながら挫折して、一応今はフリーのジャーナリストと名乗っているけれどそれも妻のエリザベスの要望に応えてのこと。そのエリザベスもバリバリのキャリアウーマンだけど、実際は前夫の間の子どもを死産し、年齢的な焦りから一刻もダニエルと子供を!を願っているのだけれど、なかなか思うようにはいかない。それが一因でダニエルとの仲も険悪になり、彼は半ば追い出されるかのように取材にやられたのでした。
みんながみんな、足を失ったルアと同様に何かを失ったままで生きている。それを衰弱するルアを看取ることで一つ乗り越えていく、そんな希望をかすかに感じさせるお話でした。構成が凝っていて読み応えのある一冊。